人はみな、迷いの中に生きている

人はどんなに立派な人であろうと、完全な人間はいません。人はみな、迷いのある者として生まれてきます。

 

しかも人は、この世に生まれたら、最後は必ず死ぬことになります。

 

ひたすら働いて、他人に迷惑をかけないように真面目に暮らしてきた人も、老いとともに体力がなくなり病気がちになり、他人の世話にならないと命を保てなくなります。

 

苦しい思いをしながら得た数多くの経験や、一所懸命に勉強してようやく身につけた知識や知恵も、息が絶えると同時に全て消え失せてしまいます。

 

どんなに天才でも、徳の高い人でも、これだけはまぬがれません。生きるということは、つまり死に向かうことなのです。

 

 

私は幼い頃、自分のいるこの世界が不思議でなりませんでした。空の果て、宇宙の果てはどうなっているのだろう、人間はなぜ生まれてなぜ死ぬのだろう、死後の世界はあるのだろうかなど。

 

このような疑問は、大人になったからといって失ってしまうものではありません。ただ、大人になると日々の慌ただしい生活のなかで、忘れてしまうだけなのです。