バラの園でエドガーと再会 久留米市美術館で初の漫画展「ポーの一族展」 

福岡ふかぼりメディアささっとー2021年04月29日10時00分

 

バラの園でエドガーと再会 久留米市美術館で初の漫画展「ポーの一族展」 

 「ポーの一族」「トーマの心臓」など数多くの作品で日本の漫画界を牽引してきた福岡県大牟田市出身の萩尾望都さん。久留米市美術館では6月13日(日)まで、「デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展」が開かれています。展示される原画は300点以上。「萩尾ワールド」に時を忘れる、演出の工夫や見どころに迫ります。

 

<萩尾望都=はぎお・ もと=さん>

 1949年、福岡県大牟田市生まれ。1969年に「ルルとミミ」でデビュー。小学館漫画賞(1976年)、日本SF大賞(2006年)など受賞多数。代表作に「ポーの一族」ほか、「トーマの心臓」(1974年)、「11人いる!」(1975年)、「残酷な神が支配する」(1992〜2001年)、「バルバラ異界」(2002〜2005年)など。2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章を受章。2019年度文化功労者の顕彰を受ける。

 

ゆかりの地でデビュー50周年展

◆萩尾さんの少女時代を思う

 

 2019年に始まり、全国を巡回してきた本展。最終会場となる久留米市美術館がある石橋文化センターは、萩尾さんの「子ども時代の思い出の場所」であり、特別にコメントが寄せられています。

 

 注目したいのは、「園内を散歩し、ペリカン噴水で泳ぎ、いつも入り口の少女二人の踊る像に見惚れていました。」という一文。園内に足を踏み入れた瞬間、萩尾さんの残像が目に浮かぶようです。

 

◆美術からはみ出たテーマに挑戦

 

 前身の石橋美術館の時代も含め、本館で漫画をテーマにした展覧会を開くのは初めて。「私たちにとって『美術』からはみ出す挑戦。展示するうち、漫画は時間の芸術と感じるようにもなりました」と、副館長で学芸課長の森山秀子さんは話します。

 

 「萩尾さんの出身地・大牟田に一番近い美術館だからこそやりたかった。『ポーの一族』の世界はバラ、バラ、バラで埋め尽くされているでしょう。ここのバラ園が咲き乱れる季節を選んで開催しました」

 

知らない人にも好きになってほしい

◆「ポーの一族」ストーリーガイド

 

 本展は「ポーの一族の世界」「宝塚歌劇の世界」「トーマの心臓の世界」「萩尾望都の世界」の4章構成。「ポーの一族」シリーズは作品の発表順に展示されています。

 

 第1章で取り上げる「ポーの一族」は、バンパネラ(吸血鬼)となって永遠に少年の姿のまま生きる運命を負ったエドガーと、彼をめぐる数世紀にわたる群像劇を描いた作品。1972〜76年に発表された15のエピソードの原画を紹介しています。

 

 「時系列が混乱したまま、物語を追って観るのはキツいでしょう? そこで、時代や場所、登場人物、あらすじなどを簡略にまとめたストーリーガイドをつくりました。漫画を専門に扱う美術館ではありませんが、私たちなりに模索したこの展覧会の置き土産になれば」(森山さん)

 

 萩尾作品に触れたことのない「これからのファン」にも好きになってほしいという思いから生まれた、作品と観る人をつなぐ工夫です。

 

◆生で原画を味わうたのしみ

 

 いざ、原画の海へ。主人公エドガーの強い瞳、カールした髪一筋の麗しい筆致、繰り返し読んだ1コマ1コマが生々しく迫ってきます。

 

 お気に入りのコミックを持参して原画と対比しながら観ると、誌面では気づかなかった繊細な表現を発見することも。

 

 ペン入れ、背景、ホワイトなどに模索の跡が見て取れるのも原画の魅力です。近年はデジタル作画も導入しているそうですが、当時の原稿用紙からあふれるペンやインクの熱量には圧倒されます。

 

◆演出の贅沢な「間」に酔う

 

 ひとしきり原画を堪能したところ、絶妙の間合いでサプライズ演出があるのは、空間にゆとりのある美術館ならでは。エドガーがアランを仲間にしようとする名場面が再現されます。

 

 別室では、萩尾さんの制作秘話インタビュー映像もゆったりと楽しめます。

 

掲載誌や付録の秘蔵コレクション

◆作品調査中に発見!レア原稿

 

 久留米市美術館だけで楽しめるのが、発売当時の掲載誌や付録といった秘蔵コレクションです。萩尾作品のコレクターで研究者の原田誠一さん(大牟田市在住)の協力で展示が実現しました。

 

 第3章「トーマの心臓の世界」に必見の展示が。本展の作品調査で「にがお絵教室」の貴重な原稿が発見されたのです。一方、久留米市美術館では原田さんの膨大なコレクションから、「にがお絵教室」の掲載誌面を展示したいと選出していたそう。奇しくも、この展覧会場で原稿と誌面を並べて披露できることになりました。

 

◆幻の同人誌「キーロック」

 

 さらに見逃せないのは、高校2年生の萩尾さんが仲間と制作した同人誌「キーロック」。6冊発行されたうちの1冊が展示されています。

 

 ロックバンド「キーロックス」の男子4人とマンガを描くのが大好きな女子4人が出会い、マンガ集団として1965年から活動。萩尾さんは、当時から詩情性のある独特の作品を描いていたとか。

 

 それぞれの道を目指して東京や福岡へ移り住んで離れ離れになっても文通は続いたという、青い時代の熱気が感じられます。

 

◆余韻を楽しむならバラ園で

 

 近年の話題作など50年間の画業を辿る第4章まで堪能すると、胸がいっぱいに。

 

 その余韻に浸るなら、バラ園のベンチまたは「石橋正二郎記念館」1階の読書コーナーへどうぞ。読書コーナーでは会期中、萩尾作品が無料で読めます。

 

 17時が近づくと、閉園を知らせる曲「遠き山に日は落ちて」が流れてきます。エドガーとアランにまた会える日まで、「いざや 楽しき 夢を見ん」。

 

イベント名/デビュー50周年記念 萩尾望都 ポーの一族展

開催日/4月17日(土)~6月13日(日) ※5月3日を除く月曜休館

開催場所/久留米市美術館(福岡県久留米市野中町1015)

開催時間/10:00〜17:00(入館は16:30まで)

料金/一般:800円 シニア:600円 大学生:500円  高校生以下:無料

※石橋正二郎記念館にも入館可能。5月5日(こどもの日)は入館無料